当たり前を作れる人になりたい、
そう思った1日だった。
「素ヱコ農園の卵は、ゆでたまごにしたとき、ぽろぽろせずに、しっとりしててすごくおいしいです。」
その方は、毎週3パック、たまごを注文してくださるお客さん。
わざわざうちまで卵を買いに来てくれる。
お客さんと直接やりとりするのは、悪いところも直接見られるから緊張するけど、こうやって、良いところも直接教えてもらえるから嬉しい。
素ヱコ農園の卵は、このお客さんみたいに定期購入で届けるという形をとりたいと思う。
捨てられてるようなオカラや米糠、いりこクズ、野菜クズなどを餌として食べた環境に体にも優しい卵を日常で食べて欲しいなって思う。
お客さんの、当たり前を作りたい。
*
午後から牛小屋を回った。
撹拌器を譲ってもらうため。
譲ってもいいよ、と言ってくださるところがあった。
そこは、1トンの撹拌器。
僕は500キロぐらいを想定していたので、ちょっとデカい。
話を聞いていくと、18歳の時から、この撹拌器を使って餌やりをやっていたらしい。
すごく思いの詰まったものだった。
今はJAの飼料を使っているから、ほとんど使うことがないみたいだ。
でも、ずっと使ってきたものだから、大切に持っておきたい気持ちがあり、でも、使わないことへの勿体なさもあり、大切に使ってくれる人がいるなら、譲りたいとのことだった。
この方の思いを引き継ぐことなんだなと、すごく責任を感じた。
長く使ってきたものには、その人の念みたいなものがあるし、僕も半端な気持ちではいけないなと背筋が伸びた。
1トンあるから、持ち運びが大変だ。
その辺りをどうするかが課題となる。
*
他の牛舎も見たかった。
車で走ってて、見つけたので、そこも寄ってみることに。
「こんにちは。伊万里で養鶏を始めたので、挨拶に来ました。」
そこの方は夫婦で仕事をされていた。
話を聞くと、なんと、この方が佐賀牛を作った方だった。
その方が始めた当時は、まだ佐賀牛というブランドが無くて、県外に研修に行って、その技術を佐賀の生産者さんたちに教えて、それが佐賀牛になっていったとか。
大きな借金をして、何もないところから、手探りでやって佐賀牛というブランドが出来上がった。
その話を聞いて、ちょっと震えた。
佐賀に住む僕達は、佐賀牛を当たり前のものと思ってるけど、それは誰かが苦労して作ったもの。
そして、その誰かが目の前にいるという事実。
「大学卒業して、農業するのは、勿体ないな。でも
農業は自分が頑張った分だけ返ってくる。そう思って頑張れ。」
佐賀牛みたいな佐賀にとっての誇らしい当たり前を、僕も、この目の前にいるおっちゃんのように作りたいなって思う。
そして、勉強したからこそ、都会に出るんじゃ無くて、その知識や経験を地元に使うような、次の当たり前を作っていきたい。