「××が倒れたって」
急にかかってきたその電話は、お昼休みでゆったりとした気分になっていた僕の気持ちを一気に、違うものにした、
「脳出血だって。病院来れる?」
その後の予定を全てキャンセルして、すぐ病院に向かうことにした。
僕にとって、大事な、大事な人だ。
(ここでは名前は出したくないから、伏せさせてください)
病院まで30分ちょっと。
病院に向かう途中、いろんなことを考えてた。
「もうダメなんじゃないかな」
いろんな思い出が、頭の中で、フラッシュバックしてくる。
その方は、前々から、体が悪かった。
でも、いざ、こうして、倒れたっていう話を聞くと、
わかっていたけど、
準備していたと思うけど、
その事実を、完全には受け止めてきれなくて、
なんか複雑な心境になった。
病院に着いた。
親族の方が何名かいた。
もうずーっと静かに、ロビーで待っているようだった。
集中治療室で、治療を続けていて、緊急の手術は免れたが、予断を許さない状況だった。
また、これから数日、容態が急変する可能性もあるそうだ。
なんとか、一命は取り止めたが、後遺症が残るようだった。
後遺症…
半身は完全麻痺するらしい。
こういう話って、どう受け止めたらいいんだろう。
全然分からない。
本当にわからない、でも、ものすごく悲しい。
コロナの影響で、その方の顔が見れなかった。
顔が見れなかったことで、現実かそうじゃないかが、一層不明確になった。
もう元には戻らない。
そして、元々いろんな病気を患ってたから、きっと治ったとしても、相当辛いことになるだろう。本人も親族も。
僕は、その方に、いっつも、夢を語ってた。
その度に、大笑いして、
ほんと、バカやね。アンタの将来が楽しみだ。
って言ってくれてた。
もうこの先、一緒に話をすることができないかもしれない。
そう思うと、悲しみがどっと込み上げてくる。
生きてるって、脆い。
誰だって、いつどうなるか分からない。
生きてること。
生きてること。
生きてること。
こうして、今、
希望を持って手足を動かしてること、
理不尽なことで、嫌な思いをすること、
自分の弱さを突きつけられ、絶望すること、
新しいことに出会い感動すること、
好きな人と一緒にいて癒されること、
生きてること
生きてること
生きてること
生きてること、を噛みしめたい。